「親の今の状態で介護保険は申請できるのかな?」「どれぐらい時間が掛かるものなんだろう」など、介護保険に関する疑問はありませんか?
今回の記事では、介護保険を申請する際の流れをお伝えします。医療ソーシャルワーカー時代に実際に受けた質問も交え、介護保険について初めて知る方にもわかりやすい記事となっています。
介護保険制度とは
運営はどこがしているの?
介護保険制度の運営主体は市町村と特別区です。つまり、公的な制度ということになります。
筆者が医療ソーシャルワーカーとして相談を受けた際「そんな保険には入りたくない!」と介護保険制度を拒絶される高齢者の方がいました。よく話を聞いていくと民間の生命保険会社の保険と勘違いされていたのです。
本記事で解説する「介護保険制度」は公的なものであり、運営主体は皆さんがお住まいの市区町村です。
どんな人が対象となるの?
介護保険制度の被保険者、つまりサービスを受けられる対象者は2種類に分かれています。
65歳以上の第一号被保険者と40〜64歳の第二号被保険者です。第二号被保険者の場合、16の特定疾病が原因で介護・支援が必要であると認定されないとサービス利用の対象者にはなれません。

要介護認定の流れ①申請
介護保険サービスを利用するためには、要介護認定が必要です。
この流れを簡潔に表にまとめました。

大きく分けて、申請→調査→判定の流れです。
申請手続きについて
要介護認定の申請は、市区町村の窓口や地域包括支援センターにて手続きを行うことになります。「今の状態で申請しても良いの?」と悩む場合にも、まずどちらかの窓口に相談すれば助言を得られる可能性が高いです。
申請手続きには、以下の持ち物が必要です。
- 申請書(窓口に置いてあります。インターネットからダウンロード可能です。)
- 介護保険被保険者証
- 身分証(医療保険証、運転免許証など)
- マイナンバーがわかるもの
- 印鑑
本人以外が申請する場合には、委任状など代理権が確認できるものと代理人の身分証と印鑑が必要となります。
介護保険被保険者証は介護認定を受けていなくても、65歳の誕生月になれば自動的に交付されます。しかし紛失してしまい、手元にないという場合には、この件も併せて窓口に相談しましょう。
主治医意見書について
かかりつけ医を持つことの大切さ
要介護認定の申請手続きをする際「かかりつけ医は誰ですか?」といったことを質問されます。これは判定に主治医意見書が必要となるからです。
意見書はただ病名や症状を書くものではなく、最近の身体状況について細かく問われます。そのため、本人の状態を把握していない医師に依頼した場合、作成できないと言われてしまうかもしれません。
このような事態を避けるためにも、普段からかかりつけ医を持つことは大切です。かかりつけ医はないけれど、今すぐ介護保険を申請したいという場合には、まずは過去に診察歴のある病院に相談してみましょう。また、主治医がおらず困る場合には抱え込まず、申請手続きの窓口に相談しましょう。
申請をスムーズにするために
要介護認定の申請をする際、窓口の担当者から「主治医に介護保険申請の旨を伝えてありますか?」または「伝えておいてください」というようなことを言われる可能性が高いです。
主治医意見書は、申請を受けた市区町村から医師に依頼し作成してもらう流れとなっています。介護を受ける本人や家族が医師のところに持って行って書いてもらうというものではありません。手続きを円滑にするためにも、申請手続きの前後(なるべく前)にはかかりつけ医を受診し、要介護認定を申請する旨を伝えることが望ましいです。
窓口にて申請手続きをする際には、かかりつけ医の医療機関名や主治医のフルネームを聞かれるため、診察券や医師名が記載された書類を持参するとスムーズです。
要介護認定の流れ②調査
申請の次は、調査の段階です。
認定調査
要介護認定の申請手続きが受理され、しばらく経つと訪問調査の日時に関する連絡が入ります。
調査の当日には、訪問調査員が自宅(入院中の場合には病室)に訪問し、心身に関することを本人や家族に聞き取りを行います。調査項目は全部で74個あるため、約1時間程度かかることを想定しておきましょう。
高齢者に多いのが、できないことまで「できる」と言ってしまうことです。しかし正確な認定を出すためには、いつもの生活の様子を調査員に把握してもらうことが重要です。事前に伝えたいことや生活の様子をまとめておくと良いでしょう。
要介護認定の流れ③判定
調査の次は判定です。
この段階では、要介護認定に関する手続きに関して、介護を受ける本人や家族が何かをする必要はありません。
判定
判定は、一次判定のつぎに二次判定を行う流れです。
一次判定
コンピュータによる判定です。訪問調査をもとに作成された認定調査票の結果をもとに、自動的に要介護度を振り分けます。
二次判定
専門家が集まる介護認定審査会にて話し合いが行われます。一次判定の結果や認定調査票の特記事項に記載された内容、主治医意見書の内容もふまえ協議されます。
結果通知〜利用開始
判定の結果、要介護度が決定し、それをもとに利用するサービスを組んでいくことになります。
認定結果の通知
要介護認定の申請手続きをしてから約1ヶ月程度で、自宅に結果が届きます。結果は非該当から要介護5までの8つに分かれています。

状態が最も重いと判断されたのが要介護5です。
要介護1〜5の方は介護保険サービス、要支援1・2は介護予防サービスが利用できます。非該当であっても、市区町村が行なっている地域支援事業のサービスを利用できるかもしれません。詳しくは市区町村の窓口や地域包括支援センターに問い合わせてみてください。
ケアプラン作成〜利用開始
要介護1〜5の場合には居宅介護支援事業所に、要支援1・2の場合には地域包括支援センターに相談し、ケアプランの作成を依頼します。
ケアプランが完成したら、サービスを提供する事業所と契約を結び、実際にサービスを利用していく流れになります。
介護保険に関するよくある質問
筆者が介護の相談を受けた際、よく質問された内容を以下にまとめました。多くの方が疑問に感じる部分のようですので、読者の方の参考になれば幸いです。
・要介護認定を受けたら、ずっと有効なの?
要介護認定には有効期限があります。お手元に届く介護保険証に記載されているため、更新は忘れないようにしましょう。新規申請(要介護認定を受けていない方が申請したとき)の場合の有効期限は6ヶ月です。
・認定を受けてから状態が変わった時には?
心身の状態に変化があったときには、有効期限を待たずに介護度を変更する「区分変更申請」が可能です。手続きは要介護認定を申請した窓口にて本人や家族が行えますが、すでに担当ケアマネジャーがいる場合、代行するケースも多くあります。
・費用はどれくらいかかるものなの?
要介護認定の申請自体に料金はかかりません。認定を受けてから利用するサービスの費用については、選択するサービスや要介護度によって異なります。
介護保険サービスを利用した場合、料金はすべて利用者が支払うわけではありません。自己負担割合が定められており、所得などに応じて1割〜3割となっています。残りの7〜9割は介護保険料と自治体が負担する仕組みです。介護保険証と一緒に同封される「介護保険負担割合証」にご自身の負担割合が記載されています。
費用面について不安があれば、ケアプラン作成者に相談した上でサービス計画を立ててもらうことをおすすめします。
最後に
ここまで、介護保険サービスを利用するまでの流れを紹介しました。
手続きに関する疑問はさまざまあるかと思いますが、わからないことは市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談しながら進めることをおすすめします。
要介護認定の申請をする前に「今はまだ時期ではないのでは」「この状態で判定がつくのか」など一人で悩まれる方がいます。しかし要介護認定には約1ヶ月と時間を要するため、深く考え込まず、まずは相談してみましょう。